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きょうぞうのちち
恭三の父
加能 作次郎
Read 恭三の父 (きょうぞうのちち) by 加能 作次郎 (かのうさくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,742 characters · 20 screens
」と母は毎晩口癖の様に言うことを言った。
恭三は何時までも黙って居るので、父は、
「読んだかい?」
「え、読みました。」と明瞭と答えた。
「何と言うて来たかい。」
「別に何でもありません。八重さのは暑中見舞いですし、弟様のは礼状です。」
「それだけか?」
「え、それッ限です。」
「ふーむ。」
恭三の素気ない返事がひどく父の感情を害したらしい。それに今晩は酒が手伝って居る。それでも暫くの間は何とも言わなかった。やがてもう一度「ふーむ」といってそれから独言の様に「そうか、何ちゅうのー。」と不平らしく恨めし相に言った。
恭三は父の心を察した。済まないとは思ったが、さて何とも言い様がなかった。
「もう宜い、/\、お前に読んで貰わんわい、これから……。へむ、何たい。あんまり……。」
恭三はつとめて平気に、
「このお父さまは何を仰有るんです。何も別にそれより外のことはないのですよ。」
父は赫と怒った。
「馬鹿言えッ! それならお前に読うで貰わいでも、己りゃちゃんと知っとるわい。」
「でも一つは暑中見舞だし、一つは長々お世話になったという礼状ですもの。他に言い様がないじゃありませんか。