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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Read 我が家の楽園 (わがやのらくえん) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 90,195 characters · 175 screens
居ないことにしておいて、よかったわ」
と、山鳩のようなふくらんだ声でささやいた。賢夫人は自若とした顔で、
「鰻じゃないけど、とっつかまえて、目釘を打つところまでやってもらわないと、ヌラリクラリと逃げてばかりいるから」
わからないことをいっておいて、百々子のほうへ向きかえると、
「百々子さん、あなた、いままでお客さまのそばにいたんでしょう」
と探るような眼つきでたずねた。
「悪うございました……でも、バカに面白そうな話だったから」
「叱ってるんじゃないのよ……どんなことをいっていた? シュラーさんのことを話していましたか」
「シュラーというのは、千々子さまを欺して、香港へ連れて行こうとした、あの鳶色の先生のことですか」
「あれはワニちゃんでしょう。知っているくせに、恍けるのはおやめなさい。洋館にいたシュラー・ハークネスのことよ」
「さあ、どうだったかな」
「じゃ、もう一度行っていらっしゃい……そばに坐っていて、よくお話を聞いて、お父さまがお客さまに、じゃ、そうしようとか、承知しましたとか、オーケーの返事をしたら、すぐ呼びにいらっしゃい」
「むずかしそうだな……お父さまが、よろしいといったら、あなたの出番ですっていいに来るんだね……やってみましょう」