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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

Read 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 116,728 characters · 231 screens

Aozora Bunko

光太郎はスカートというものが近代のムスメ達の膝をいかにたくみに、抒情風につつみ上げているかということをその間際に感じた。

光太郎は永い間手紙を見ていたので、らくに話が出来たし、少女もすらすらと話をすすめた。ただ光太郎はこの少女の若すぎる生き身を感じるときに、智恵子とたった二人きりでいたことに気づいて、この少女をみるはればれしさにある抗議を自身の中に感じた。死んだ智恵子がいう抗議ではない、かれ自身がつくりあげる妙な抗議であった。少女は先生といい、手紙にあるお父さんなぞとは呼ばなかった。どこをさがしてもさし対いの二人のあいだには、お父さんなどという言葉は決して存在していない、それは手紙だけに用いられる装飾語であろうかと思えた。

少女は二時間しかいなかった。彼女を村の入口まで送って行った途中、お父さんなぞとお手紙に書いたりしまして、ご免遊ばせといい、光太郎は例の含み声で愉しく笑って別れた。

人体飢餓

彫刻家山に飢ゑる。

くらふもの山に余りあれど、

山に人体の饗宴なく

山に女体の美味がない。

精神の蛋白飢餓。

造型の餓鬼。

また雪だ。       (後略)

昭和二十七年十月、光太郎は七十歳、太田村の山村を去った。