Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あるさっかのやくび
或る作家の厄日
豊島 与志雄
Read 或る作家の厄日 (あるさっかのやくび) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,284 characters · 21 screens
本当の愛情が世に稀な所以だ。文学がヒューマニズムを旗印とするからには、どこまでも愛の味方であり、暴力の敵であらねばならぬ。」
彼女はまたおれを見上げた。感激に涙ぐんでるような眼眸だ。おれは突然、憎悪を感じた。彼女の衣服をはいで、彼女の醜い裸体をそこに見た、そのことのために、彼女を憎悪するのだ。再び伏せてる彼女の顔の方へ、手を差し延べて、その※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)をぐいと持ち上げた。
「なんだ、下ばかり向くなよ。顔は真直に向けとくものだ。」
彼女をそこに押し倒してやりたい衝動を、むりに抑えて、眼をそらしながら言った。
「もういい。」
彼女が出てゆくより前に、おれはそこに寝そべり、眼をつぶった。
なにか狂暴なものが、おれの身内に頭をもたげている。そしておれの眼前に、忽然と、相馬武彦の姿が現われた。多加代の夫だ。おれは彼を一度か二度、あの文化式な住宅の横手の菜園に見かけたことがある。いろんな野菜を作って、自分で手入れしてるのだ。外浪費で内吝嗇の、そして案外すらりとした恰好の男だ。ちょっと旅行に出てた筈だが、ふいに帰って来るかなにかして、そのために多加代は来られなくなったのかも知れない。