Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Read 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 113,554 characters · 228 screens
」
引止められても、私はどうしても帰らなければならない気がして、外へ出た。
寺へ帰ると、父の顔が正視できないような、今までいたところをすっかり父が知っているような気がした。
「だいぶ遅いようだが若いうちは夜あまり外出しない方がいいね。」
父はやさしく言う。
「つい友達のところで話し込んでしまったものですから。」
私は、逃げるように自分の室へはいるのであった。
自分の室はすぐ縁から犀川の瀬の音がするところにあった。今夜はなぜかその瀬の音までが、いつものようにすやすやと自分をねむらせなかった。私はながい間目をさましながら、もっと女のところにいればよかったとも考えた。
「あなたのようなお若い方はおことわりしているのですが、おうちをよく存じ上げているものですから……」
そういうおかみまでが、しみじみした、これまでにない或る種類の人情をかんじた。しかし私は座敷へ呼んで見た女が、どうしても寺へお詣りに来て、いつもちゃんと坐って熱心な祈願に燃えている有様と、まるで別人のような気がしてならなかった。その合掌して、目を閉じて頻りにすすり泣くような声をあげて祈っているのが、記帳場にいてもそれと聴き分けられるほど、鋭い艶艶しい性慾的であるのに、会っていると、あれほどの刺戟性もなければ美しさもなかった。