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せんそうざっき
戦争雑記
徳永 直
Read 戦争雑記 (せんそうざっき) by 徳永 直 (とくながすなお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,149 characters · 25 screens
「残飯食い、残飯食い」
と罵しった。
私は、自分よりもズッと弱虫の、家主の、末っ子の、四郎次からも殴られるようになった。
殴られても、私は泣かなかった。泣いても家に帰って、母のいるところでは泣かなかった。母のいるところで泣けば、また母から殴られなければならなかったからだ。
一度泣いてかえったことがあった。すると、母が私の手を引っ張って、私を殴った喧嘩大将の源しゃんの家へ行って、源公のおふくろに、
「いくら貧乏人の子でも、こんな血の滲むほど打ったものを、見ていて知らぬふりするものがあるかナッ!」
と母は真赤になりながら云ったが、小作米とりの、源しゃんのおふくろは、鼻のさきであしらって、とり合わなかった。私の母は口惜しさに慄えながら、やけ気味に、面当に、私をその場で無茶苦茶にひっぱたいた。私は痛さにヒイヒイ云って泣いた。しかし、源公のおふくろは、止めもしなかった。
私はひとり遊ぶことが多くなった。そしていつも、『父が帰ったら、屹度金持になるんだろう』と思った。私は、いちごとり、蝸牛とり(蝸牛は焼いて喰うと甘味いものである)、笹の実とりなどに、姉たちとか、でもなければ一人でいった。