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ししょ
戦国武士道物語 死處
山本 周五郎
Read 戦国武士道物語 死處 (ししょ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,176 characters · 33 screens
……そこでも小者や家士たちが右往左往していた。武具の荷や、糧秣の山がそこ此処に積みあげてあり、黄昏の濃くなりつつある庭にはあかあかと、篝火が燃えあがっていた。
「おお千坂の若か、ようみえたな」
備後為元は白いもののみえはじめた髭を食いそらしながら、すでに鎧下を着けて、大股に客間へはいって来た。
「この通りとりちらしてある。なにか急な用でもあってみえたか」
「ぶしつけなお願いにあがりました」
「わかった、信濃へつれてゆけと云うのだな、そうであろう」
「いいえ違います」
通胤はさっと蒼い額をあげて云った。
「かねて親共とのあいだにお約束つかまつりました、菊枝どのとわたしとの縁談、いちおう破約にして頂きたいと存じまして……」
為元の眼がぎろりと光った。
「それはなぜだ、どういう仔細で破約しろというのか。わけを聞こう」
「仔細は申し上げられませぬ。ただ、わたくしの考えといたしまして、ぜひとも菊枝どのとの縁組を無きものにして頂きたいのです」
「そうか、……そうか」
為元の眉がけわしく歪んだ。
「云えぬと申すなら聞くまい。しかしそれは対馬どのも承知のうえの話であろうな」
「いやわたくし一存でございます。