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おしかけにょうぼう
押しかけ女房
伊藤 永之介
Read 押しかけ女房 (おしかけにょうぼう) by 伊藤 永之介 (いとうえいのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,073 characters · 22 screens
ちよつとやそつとでは行き来の出来るところではないと、竹松の親戚の者も源治もみんな口をそろえて言つたが、竹松はそんなことはテンデ問題にしなかつた。会えなければ会えないでもかまわない。松太のいる同じ満洲に行くことさえできれば満足だ、同じ満洲に松太がいることさえわかれば、それで気が済む、死んでも心残りはないと、頑としてきかなかつた。それだけのことで、あんな遠方に行つてどうすると、竹松の兄弟たちがいくら渡満を思いとまらせようとかかつても、まるで歯が立たなかつた。それで一人では心細いから、武三を連れて行くというのであつた。どうせ大勢の団員のなかに挾まつて行くのだから、武三は置いて行つてもよかろうと言つたが、今度は武三自身が渡満の夢で夢中になつていて、源治の言うことなど全然相手にしなかつた。
源治は途方に暮れた。竹松を罵り、武三をうらんだ。いつたい何でこんな大戦争をしなければならないのか、勝手にただ一人の働き手の佐太郎を、田圃からひツこぬいて掠つて行つた戦争を呪つた。毎日朝から晩まで、来春から田圃をどうするかと歎き暮した。
春野も近づいて、源治はヒヨツコリと耳寄りな話を聞きこんだ。