Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

りゃくだつしたたんとう

掠奪した短刀

田中 貢太郎

Read 掠奪した短刀 (りゃくだつしたたんとう) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,073 characters · 3 screens

Aozora Bunko

寛一郎はもとより剛胆な男であるから、嘲笑って見ていた処で、すぐ火の玉は見えなくなった。朝になって蚊帳を調べて見ると、火の玉の這ったと思われる処が黒く焦げていた。

寛一郎はちょっと不思議に思ったが、大して気にもかけずにいた処が、その夜になって壁厨の中から短刀が飛出して来て枕頭へ立った。その短刀は会津から掠奪して来たものであった。寛一郎はおやと思って眼をやった。同時に寛一郎の眼が覚めた。寛一郎は夢を見ていた処であった。

怪異はまだ続いて、その翌晩は短刀が飛び出して来て胸を傷つけた夢を見た。同時に痛みを覚えるので、灯を点けてみると、そこに傷が出来て血が出ていた。

短刀の怪異は、それから白昼にも起るようになった。短刀が飛び出して来て、体に当るような気がするとともに、そこに痛みを覚えて傷が出来、同時に血が出るのであった。

「女の祟りじゃ」

さすがの寛一郎も弱ってしまって、高知市の東北になった陽貴山へ往ってそこの和尚に、

「何とかして、封じてもらいたいが」

と云って頼んだ。和尚は承知して、寛一郎の家の後へ小さな祠を建てさせ、その中へ彼の短刀を納めさしたところで、それからは何の異状もなくなった。