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ほうろう
放浪
織田 作之助
Read 放浪 (ほうろう) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,614 characters · 47 screens
聴けば、金造は強慾で文吉を下男のように扱い、それで貯金帳を作ってやっているというのも嘘らしく、その証拠に、この間も村雨羊羹を買うとて十銭盗んだら、折檻されて顔がはれたということだ。そんな兄と別れて帰る途々、順平は、たとえ美津子に素気なくされ続けても、我慢して丸亀の跡をつぎ、文吉を迎えに行かねばならぬと思った。癖で興奮して、出世しよう/\と反り身になって歩き、下腹に力をいれると、いつもより差し込み方がひどかった。
名ばかりの亭主で、むなしく、日々が過ぎた。一寸の虫にも五分の魂やないか、いっそ冷淡に構えて焦らしてやる方が良いやろと、ことを察した板場の木下が忠告してくれたが、そこまでの意気も思案も泛ばなかった。わざと順平の子だといいならして、某生徒の子供が美津子の腹から出た。好奇心で近寄ったが、順平は産室にいれてもらえなかった。しかし、産婆は心得て順平に産れたての子を渡した。抱かされて覗いてみると、鼻の低いところなど自分に似ているのだ。本当の父親も低かったのだが。
近所の手前もあり、吩咐られて風呂へ抱いて行ったりしている内に、何故か赤ん坊への愛情が湧いて来た。