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せいだんじゅうにそう
政談十二社
泉 鏡花
Read 政談十二社 (せいだんじゅうにそう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 24,626 characters · 48 screens
院が開けてからも二月ばかり病気びきをして、静に療養をしたので、このごろではすっかり全快、そこで届を出してやがて出勤をしようという。
ちょうど日曜で、久しぶりの郊外散策、足固めかたがた新宿から歩行いて、十二社あたりまで行こうという途中、この新開に住んでいる給水工場の重役人に知合があって立寄ったのであった。
これから、名を由之助という小山判事は、埃も立たない秋の空は水のように澄渡って、あちらこちら蕎麦の茎の西日の色、真赤な蕃椒が一団々々ある中へ、口にしたその葉巻の紫の煙を軽く吹き乱しながら、田圃道を楽しそう。
その胸の中もまた察すべきものである。小山はもとより医者が厭だから文学を、文学も妙でない、法律を、政治をといった側の少年ではなかった。
されば法官がその望で、就中希った判事に志を得て、新たに、はじめて、その方は……と神聖にして犯すべからざる天下控訴院の椅子にかかろうとする二三日。
足の運びにつれて目に映じて心に往来するものは、土橋でなく、流でなく、遠方の森でなく、工場の煙突でなく、路傍の藪でなく、寺の屋根でもなく、影でなく、日南でなく、土の凸凹でもなく、かえって法廷を進退する公事訴訟人の風采、俤、伏目に我を仰ぎ見る囚人の顔、弁護士の額、原告の鼻、検事の髯、押丁等の服装、傍聴席の光線の工合などが、目を遮り