Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぶんかさい

文化祭

坂口 安吾

Read 文化祭 (ぶんかさい) by Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,978 characters · 28 screens

Aozora Bunko

「ワー。助からない」

「小森ヤツ子さん!」

「へんな声をださないで。私もう帰るわよ。でも、覚えてらッしゃい。二等の運賃は忘れないから」

「モシ、モシ」

「たくさんだッたら!」

「念のために申上げたいのですが、最終のバスはとっくにでました。次のバスは明朝まででませんが」

「私の連れの方は?」

「ボクは存じません」

「お連れの方はボクが最終のバスに御案内いたしまして、無事おのせいたしましたんで」

「私にはバスの時間も知らせなかったのね」

ヤツ子の怒りはここに至ってバクハツしたが、内心大いによろこんでいるのは信二であった。怒り、激怒。これぞ関係中の関係だ。ここに於て二人の心は深く交っているのである。怒り、憎しみ、愛、それは表面の波紋にすぎない。まず何よりも心が深く交ることが大切なのである。あとは潮時と運命の問題だ。これが彼の哲学だ。

「今日は文化祭で若い衆が飲んでますから、婦人の夜歩きは危いです」

「ほッといて下さいな」

「イエ、どこまでもお伴します」

ヤツ子はズンズン歩いたが、日がとっぷり暮れてしまうと、何一ツ見えなくて歩けない。三歩ほどうしろに相変らず信二がついてくるので、日が暮れきってみると、とにかくその存在がなんとなくタノミでもある。