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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
Read 文藝別冊[総特集]岡本綺堂 (いけぶくろのかい) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 72,671 characters · 149 screens
で、右の怪異は全く池袋の祟と一決して、一同もホッと息を吐いたと云う。
以上は紛れもなき事実で、現在これを目撃した人の談話をそのまま筆記したものである、しかしそれが果して池袋の祟であるや否やは勿論保証の限でない。今日でも北豊島に池袋村という村は存在しているが、当時は曾てそんな噂を聞かぬ。けれども、江戸時代には専らそんな説が伝えられたのは事実で、これに類似の奇談が往々ある。で、名奉行と聞えた根岸肥前守の随筆「耳袋」の中にも「池尻村とて東武の南、池上本門寺より程近き一村あり、彼村出生の女を召仕えば果して妖怪などありしと申し伝えたり、実否を知らず」と記してある。シテ見ると、池尻の者にもそんな伝説があるか知らぬが、これは余り聞き及ばぬ事で、恐らく筆者の肥前守が池袋を池尻と聞き誤ったのではあるまいか。しかし北豊島と池上では、北と南で全然方角が違うから、或は実際別物かも知れぬ。兎にかく江戸時代には池袋の奉公人を嫌うとは不思議で、何か一家に怪しい事があれば、先ず狐狸の所為といい、次には池袋と云うのが紋切形の文句であった。又一説には、単に奉公人として召仕う分には仔細ないが、万一これと情を通ずる者があると、それから種々の怪異を見るのだとも云う。