Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Read 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 177,454 characters · 357 screens
「ちゃんと時間になると、瓶に乳をしぼって玄関へ出してあるのです。いただきますと言って持ってくるんですが、奥さんは寝そべって添乳してめったに出ていらっしゃりません。」
「いつでもかい。」
「いつでも、出してあるんです。」
平林は、へんに不平のある顔をし、それを言い出してはならぬというような表情をしていた。さきでも面倒くさがっているな、とすぐかんづいた。
「動坂の家とどちらが感じがいい?」
「そりゃ動坂の方です。」
「いつしぼったのかよく聞いて来るんだろうね。」
「え、おくさんはそのたびに、今しぼったばかりですと言っています。」
その日、赤児は緑便をしたので、乳のせいだと思った。その剰余をすかしてみると、どろどろなものが瓶の底に溜り、動かすと蝶の粉のようなものが浮いていた。
「こんな乳だから……お腹をコワしたんです。」
女は、「よく気をつけて呉れればよいのに。」と、奥さんを怨んだ。「きっと朝しぼっておいたのをくれたんでしょう。」とも言った。
それからずっと赤児は、腹をコワし、じめじめした梅雨は部屋のなかまで湿り込み、夏と平林とは、下田端からかえると、井戸端で足を洗わねばならなかった。