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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Read 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 177,454 characters · 357 screens
」
笏も女と同じことを言った。
そのとき母親は、ふと童子の手に笛の提げられてないのに初めて気づいた。
「おまえは笛をどうかしたの。珍らしくもっていないではないかね。」
「ぼく、笛はつまらないから止した。」
「そうかえ、しかしお前はそんなにまで大人にならなくともいいわ。まだ笛を棄ててもよい年頃ではない……。」
童子は、白いような微笑いをもらしながら、母親にわざとのように或る哀愁をふくんだ声音で言った。
「笛なんぞ携っていつも鳴らしはしないんですもの。」
「どうして鳴らないんでしょう。」
「笛の孔が塞がってしまっているの、六つの孔がみんな開いていないんです。」
「お見せ。」
母親は、笛を手に取ると、古い埃や泥のようなもので凝固ってしまった孔内は、吹こうにも息の抜けみちがないために音色が出なかった。
「ひどい埃ね。」母親は、それを縁端へ持って出て、細い針金のようなもので、孔内を掃除をしようとしながら、
「いまによく鳴るようにしてあげますから待ってお出。」
そう言い、孔の一つびとつに針金を貫しながら、器用な手つきで古い埃をほじくり出した。丹塗りの笛の胴にはいってから密着いたのか、滑らかな手擦れでみがかれた光沢があった。