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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Read 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 177,454 characters · 357 screens
娘は父親のそばへ来て、やっと安心をしたような息づかいをした。
「わたしいつもこの水たまりへまいりますの。此処へくるとわたしお話しができるものですから。」
「誰と?」
娘は目を伏せて羞かしそうに微笑って見せた。
「水の中の人と?」
「お前のかげとかね。」
眠元朗は娘をはじめて女として見るような気になった。――なおかれの眼底を去らないのは、先刻見た女としての娘だった。
「さあ下りよう、お母さまはきっと寂しがっているだろうから。」
一軒きりの燈影は、ここからは微かなあるかないかの明りの中にあった。紫と灰色との縞状の色合いを曳いた砂原には、その家以外に何一つ明りらしいものがなかった。
「お前は自分を美しいとでも思って、それゆえああして影をうつして話をしているのかね、お前にはわたしや母親がいるではないか。」
眠元朗は黙っている娘が、すき間さえあれば父と母との目から離れて行って、そして何かひとりで考えごとをしているのを思い当てて、物に躓いたような軽い驚きをかんじた。
「けれども……。」娘ははにかんでいたが、思い切って、「わたし時々ひとりでいたいんですの。わたしは美しいと思ったことがないんですけれど……。