Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Read 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 177,454 characters · 357 screens
「子守唄もうたえないし……。」
ぽつんとそんなことをいう。
「何をつまらないことをいうんだ。……写真はちゃんと封をしておいたよ。見るとおたがいにいけないから。」
「え、見ませんとも、見たらそれこそ大へんです。」
実際、女はまだ一度も見ないらしかった。私がそれを好んで見、女はなるべく見ないようにしているお互いの気もちが、どういう風にそれをべつべつに考え違っているのかと、おりおり私は考えた。がどこまで孰らが真実であるかが分り兼ねるような気がした。――ぼんやり食事をしていると、何かを考え出し、それをお互に悟られまいとするようなことが多く、箸をもったまま眼で庭をさぐり合うことがあった。そういうとき不思議にわずかの間に遠い笛の音色をそらんじ、それの消えてゆく尾について哀愁が起った。さまざまな音色の笛がいつも赤児の枕もとにおいてあったから、それが何処からか起ってくるような気がした。
ちいちゃい童子はいつも一人で歩き、持ちきれぬほど色彩のはげしい笛や太鼓や兎や犬を抱え、菅で編んだ笠をかむり、足にはおぼえのある毛糸の靴下をはいていた。靴下はだいぶ擦り切れているのを見ると、よほど歩いたものらしく思われた。