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かんのう

文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会

岩村 透

Read 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会 (かんのう) by 岩村 透 (いわむらとおる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,976 characters · 12 screens

Aozora Bunko

この話は最近読んだばかりだから、まだ記臆には新しい方だ。色や光や臭いという方面から突込むのも面白いが、この話は音の怪に属する。

他の事でも無い。英吉利の画壇で有名な人でハークマと言えば知らぬ人はない。この人はローヤルアカデミーの会員でもあるし、且つまた水彩画会の会員でもあって、頗る有力な名誉ある人だ。近頃この人の自伝が二冊本になって出た。この本の中に今の所謂頗る怪めいた話が出ている。それがしかも頗る熱心に真面目に説いてある。一言にして尽くせば、自分の昵近な人の間に何か不吉なことがあると、それが必らず前兆になって現われる。いかなる前兆となって現われるかというに叩く音!

どんな風に叩く音かといえばコツコツと叩く音だ。ハークマのお母さんの死んだ時もそうであったと叙べている。この人には二どめの妻君があって、この妻君も死ぬことになるが、その死ぬ少し前に、ハークマは慥か倫敦へ行っていて、そして其処から帰える。一体この人の平素住んでいるのは有名なブッシュというところで、此処には美術学校もあるし、この土地はこの人に依って現われたので、ハークマのブッシュかブッシュのハークマかと謳われていたくらい、つまりこの怪談の場所は此処になるのだが、その倫敦から帰ってきた時は、恰かもその妻は死に瀕していた時で、恰度妹がいて妻の病を看て