Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
にいづまのしゅき
新妻の手記
豊島 与志雄
Read 新妻の手記 (にいづまのしゅき) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,807 characters · 22 screens
」
母は庭に出て空を仰ぎ、いいでしょうとか、いけませんとか、指図をする。からりと晴れてる朝でもそうなのである。
それが、実は、今になって思い当るが、重大なことだった。なんにも分らない小娘ならいざ知らず、一家の主婦が、お洗濯をして宜しいでしょうか、とは何事であろう。せめて、お洗濯をしようと思います、とでも言えばまだよかった。だが私はうっかり暮していた。
或る日、母の留守に、アルバイトをしている学生だという青年が来て、洗濯石鹸とちり紙を買ってくれというので、私は少し買ってやった。あとで、そのことを母に告げると、母は不機嫌そうに黙りこんで、やがて私をたしなめた。
「学生だかなんだか分るものですか。一度買ってやると、また何度も来ますよ。これからは、家のひとが留守だから分りませんと、そう言ってお断りなさい。買物のことは、わたしに相談してからするんですよ。」
そして品物の金高を聞いて、その金を母は私に返してくれた。私はへんな気持ちになった。
だいたい、私は月に千円ずつ小遣銭を貰っていた。結婚して翌月からのことである。吉川が言ったところによると、母は吉川に、美津子さんもお友だちがあったり、お化粧品も好きなのがあるだろうし、お小遣はどれぐらいあげたらよいかと、尋ねたそうである。