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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 197,228 characters · 394 screens
「その通りだ。会ってみい。話せる男。――奇謀ばかりでなく、世を観る眼がある」
「殿との、お交わりは」
「文書の往来は以前からだが、相見たのは、先頃の安土が初めてのこと。――しかし半日のまに、おたがいの胸は語りつくした。秀吉は心づよい。左に竹中半兵衛、右に黒田官兵衛、帷幕はできておる」
そのとき、うしろの列で、何かがやがや行軍が乱れた。小姓組の中で、どっと、笑い声がする。
蜂須賀彦右衛門がふり向いて、堀尾茂助を叱っていた。堀尾茂助はまた、組の小姓たちを、
「静かにせいッ、行軍は、厳粛に」
と、呶鳴りつけている。
「どうしたのか」
秀吉がたずねると、彦右衛門が困ったような顔して、
「お小姓どもにも、みな騎馬をゆるしましたので、行軍中、はしゃぎ合って、まるで遊山にでも参るよう、騒いだり悪戯し合ったりなど致し、茂助も、取締りかねておるようでござります。やはり小姓どもは、歩行させたほうがよろしくはないかと思います」
と、告げた。
秀吉は、苦笑しながら、
「幼年のときは、あれが勇躍しておるのだ。抑えきれぬ歓びにはしゃぎ立つのだ。抛っておけ抛っておけ」
と、眺めやって、
「誰か、落馬いたしたようではないか」