Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 197,228 characters · 394 screens

Aozora Bunko

――上月城は、宇喜多を釣るに、恰好な餌だ。あれを捨てれば、かならずやまた宇喜多が、兵糧を籠め武器弾薬を運びこむ。さらに兵馬も思いきって増強するだろう――そしてだ!」

と、秀吉は、囁くように、声を落し、床几から身をのり出して、例の、信長から拝領した大明南蛮絵図の軍扇を、備前の方へ指して云った。

「この秀吉が、ふたたび上月へかかるを見越して、こんどは、宇喜多直家自身大軍を率いて、後詰に出て来るにちがいない。――その裏を掻く戦法だ。そのために、上月城は捨て餌にしたのだ。怒るな、鹿之介」

もちろんこういう方針は、ひとり秀吉の思いつきや独断であろうはずはない。参謀には黒田官兵衛や竹中半兵衛などもいる。鹿之介は、得心して退った。

年は暮れて、正月にかかる。――物見の報告は、思うつぼを伝えた。備前の宇喜多城は、蟻が物を運ぶように、夥しい軍需を、すでに上月城へ輸送したというのである。

果たして、その守将には上月景利を任じ、兵は精鋭を選りすぐって籠めた。

秀吉は、本軍をもって、それを包囲させ、一方、尼子勝久、山中鹿之介、その他、一万の兵は、そっと分けて、熊見川のほとりに隠しておいた。