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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,758 characters · 383 screens

Aozora Bunko

当年六十七歳の老武者の槍先から逃げまどうような奴は、この先ともに世に生きていたところで、世の役には立つまい。われと思わん若い者なら、この首を取れ。取ってみよ」

長閑斎は、広言を吐きぬいていた。実際、彼の槍に立ち得る者もなかった。真実死をきめた人の働きには、老若の差もありとは見えない。まさに老獅子の奮迅に似ていた。

突き崩された寄手は、ついに鉄砲を揃えてこれを撃とうとした。すると堀秀政の旗本、薬師寺某は、

「さすがに、甥も甥なり、叔父も叔父なり、あわれにも、見事な死に振りよ。ねがわくは、あの入道首はそれがしに給われ」

と鉄砲組の狙撃を制して、一槍をもって立ちむかい、ついに突き伏せてその首級をあげた。

長閑斎は、さきに甥の光春を介錯した光春所持の刀を帯していた。首級はその品と共に、やがて、堀秀政の手から三井寺へ送られ、秀吉の実検に供えられた。

「死んだか。……この長閑斎も、おもしろい老人だったが、とりわけ、光春は惜しい男だった」

秀吉は、首と刀を前にして、左右の諸将にこんな思い出を語った。

「あれはもう――だいぶ以前のことになるが、光秀が初めて坂本城を拝領した頃、信長公のお使いで、この筑前が祝いに参ったことがある。