Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,758 characters · 383 screens
揚ったのでもよくわかる。
「母さま」
「……寧子よ」
老母と彼女とは、その歓声をひとつの声とも思われず、相抱いてうれし涙にむせんでいた。
老母は聖観音へ額ずいた。寧子も心からひれ伏した。はや現もなげなその姿へ、母は母らしく促した。
「寧子。いかにこの時とはいえ、あの子も、久しぶりにそなたを見るのじゃ。そのすがたは余りに窶れ過ぎて見えよう。いそいで髪など撫でての……」
「はい。はい」
「そして、御門前まで出て、お迎えしたがよい」
寧子はいそいそと庫裡の水屋へかくれた。髪をなで、筧の水を掌に溶いて、瞬間に薄化粧をほどこし、帯、襟もとも直してそこから藁草履を穿いた。
一族の主なる者、家士はことごとく、すでに門前に出て、年の順、身分の順に、出迎えの列をととのえている。附近の木の間木の間にも、老幼の顔がいっぱいに覗いている。その多くは部落の者たちであった。何事が起るのかと眼をまろくしている様子である。
しばらくすると、また二名の武者が、先駆としてこれへ報らせて来た。――もうすぐそこへ殿を始め御一同お見えになります、というのである。寧子の前へ告げ終ると、その者たちもまた列の端に加わった。