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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,758 characters · 383 screens
その日、三法師の祝事は終った。
さらに、きのうに勝る盛宴がそのあとで催された。新君戴立の披露というので、席は城中の広間三ヵ所でひらかれ、人はきのうに数倍していた。座間、もっぱら話題にのぼったのは、羽柴筑前守こそ怪しからぬということだった。仮病をかまえこの大事な日に欠席するなど、言語道断、彼に真底からの忠なく信もなきことは、はやくも今日に見えたり――という者などあった。
勝家はみずからなぐさめた。
(秀吉が帰国したことは、考えようでは、却って、この勝家に有利であった)――と。
この紛々たる秀吉非難が、滝川や佐久間などの徒の作為から生じたものであることは、充分、承知していたが、勝家はなお、この空気をもって、爾後の形勢を卜す上に、自己に有利なものとして、強いてひそかにほくそ笑むの小快感をむさぼっていた。
会議、月の忌、祝日と、多事な日がつづいたあと、清洲は、毎日の大雨だった。
諸侯のうちでも、細川、蒲生、池田などは、祝日のすぐ翌日、帰国の途についたが、爾余の諸侯は、木曾川増水のため、足どめにあい、
(きょうは? 明日は?)
と、霽れを待って、なお無為な日を宿所に過ごしているほかなかった。