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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 176,911 characters · 353 screens
云い払うのでありました」
「ああ、惜し、惜し」
秀吉は歎声を発すると共に、眼に涙すら見せて、玄蕃允の心底に同情していた。
「それほどな男をよ……。へたに使い殺したは、やはり勝家のほうが不覚じゃ。……よし、よし、望みにまかせて、きれいに死なせて遣わさん。彦右、取り計らえ」
「畏りました。――では、明日にも」
「うむ。早いがよい」
「首の座は?」
「槙島の野」
「引き廻しますか」
「…………」
考えていたが、
「むしろ、それは玄蕃の、望むところであろう。京中を引き廻したうえ、その夜、槙島の野で斬れ」
と、命じた。
そして次の日、彦右衛門が槙島へ出向くに際して、秀吉は、
「さだめし囚衣も垢じみていよう。死装束に、これ与えよ」
と、小袖二重ねを、玄蕃允へ、持たせてやった。
彦右衛門は秀吉の意を帯して、その日、再び槙島の配所へ赴いた。
そして幽居中の玄蕃允に会い、
「望み通り、近日、京中引き廻しの上、槙島の野において、斬首のこと、仰せつけられた」
と、伝えた。
玄蕃允は、悪びれた風もなく、
「忝うござる」
と礼をのべた。
そこで、彦右衛門は、さらに、
「その日は、これを着られ候えとて、特に、お小袖二重ねを、筑前守様より下しおかれました。