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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 176,911 characters · 353 screens

Aozora Bunko

「きょうは、ごゆるりと、煩いなく御休息がとられましたろう」

と、四名の老職が、顔を揃えて、その室に見えた。

――ばかな、と信雄は腹が立った。所在なくて仕方がなかった程だ、と呶鳴りたかった。けれど、いかに主君たりと、彼らの善意な考え方までいちいち是正することもできない。

「ム、ム。のびのびしたよ。お汝らも各※(二の字点、1-2-22)の宿所でくつろいだか」

「くつろぐ間もございませぬ」

「なんで?」

「各家から、御音問のお使いが絶えませぬで」

「そんなに訪客があったのか。なぜわしに通じて来ぬ」

「せっかく、御休息の一日を、お客にお邪げ遊ばされてはと……」

信雄は、指で輪をこしらえては、膝がしらを弾きながら、上品で無感興な顔を、鳩のようにじっと持っていた。

「ま、よいわ。……夜食はお汝らもここでせい。一盞酌もう」

老職たちは、顔を見合わせた。やや困ったような容子が見える。そういう心理を看取ることにかけては、信雄は敏感であった。

「何か、障りがあるのか」

「ござりまして――」

と、四名のうちの岡田長門が、詫びるように云い出した。

「実は、先ほど、筑前守様からのお使いで、今夕、四名とも揃うて、宿所まで来い、とのお招きでございますゆえ、おゆるしを仰いだ上でと、このように、伺い出たわけでございまする」