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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
「隠密ッ」
「捕えろ」
常に、敵国のさぐりに対して、領民はよく訓練されていたので、驚きはしなかったが、逃げまわる山伏を追い争ったために、一時は旋風のようになった。
「――鎮まれ、鎮まれ。曲者はこれへ捕えた。立ち騒ぐでない」
踊りの中へ交じって、庶民と一緒に踊っていた信長と池田勝三郎と藤吉郎と、三名の姿がそこにあった。
騒ぎを制しながら、あたりの人影を遠ざけていたのは、藤吉郎であり、組み敷いた山伏の体へ、馬のりに跨がって、締めつけているのは、勝三郎信輝であった。
「おのれ、誰に頼まれて、われわれの御主人を暗討ちしようとした。申せ。実を吐かさねば縊め殺すぞ」
勝三郎信輝は、後の池田勝入である。強力者だし、戦場往来の若者なので、もとより仮借がない。組み敷かれた山伏は、彼の拳を一つ喰らうと、
「ゆるせ。ゆるしてくれ」
と、忽ち悲鳴を揚げた。
「人違いじゃ。人違いして斬りつけたのでおざる。――まったく、夜目の眼違い。手前の意趣ある者と、余りようお姿が似て在すので」
「嘘を申せ。踊りの輪へ紛れ入って、一太刀にと斬りつけたからには、われわれの御主人を、確かに、なにがし様と知って致したことに相違ない」