Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens

Aozora Bunko

「おかしゅうございますこと。虫の音を聞いたり、秋草を見たりして、そぞろ歩きをなされに出たあなた様が、どうして河中へ、小舟など出して、永いこと人眼を避けてお在で遊ばしたのでしょう」

「ほほ。知っていやったか」

「わたくしは、こうして奥に籠っておりましても、あなた様のしていらっしゃるくらいなことは、何でも存じ上げております」

「そうか」

元康は、苦笑したが、鵜殿甚七と会っていたことは、夫人にも明らさまにいえなかった。なぜならば、この夫人は松平元康という者に嫁いで来ても、決して元康の妻となり切っているとは、彼に信じられなかったからである。

里親の家来筋や親戚が訪れてくれば、何でもそれに話してしまうし、義元の奥向きの誰彼へも、始終、文使いなど遣り取りしているのである。

元康にとっては、質子目付の眼よりも、この夫人の悪気のない無分別のほうが、遥かに、警戒を要したのである。

「いや、何気のう河原の小舟に乗りとうなって、独りで水馴棹を持ってみたが、舟と水とは相性のものと思うていたが、さて流れに出てみると、なかなかままに動かぬものじゃな。はははは、子どものような、他愛もないこと。