Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
軍状である。味方の大高城から、何か火急な飛脚といえば、容易ならぬこととは直ぐ知れている。
「使者は」
「御本堂に控えております」
「すぐ、お館様へ、御披露申しあげておると伝えて、しばらく休息させておかるるがよかろう」
元康は、それを持って、評議の席へもどって来た。
何事の急報か?
と、案じるもののように、席の諸将も、義元自身も、その間、無言のまま、元康の取次を待ちぬいていた面持だった。
「御前まで」
と、元康は、書状を、朝比奈主計の前へおいて退った。
主計の手から義元の前へ、それは披露された。義元は、すぐ封を切って、一見していたが、
「……猪口才な」
黒々と鉄漿を染めた歯が下唇を噛んでいた。すぐ側に居流れている牟礼主水正や庵原将監のほうへ、書状は無造作に投げられていた。
義元の眸は、じっと、欄間を仰ぎ――順々に書面を一読して廻している幕将たちも、次々に、異様なかがやきを眼に湛えたまま、しばし、沈黙を守り合っていた。
大高城は、尾張本国と知多半島との咽喉にあった。
ちょうど、胴と脚の附け根のような地形に、今川家の勢力は犬牙のように深く蝕い入って、沓掛、大高の二城をつなぎ、織田領の脚部をそこで切断した形になっていた。