Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
と、見込んで奉公したその眼に狂いはなかったが、何ぞ計らん、それはかくも兵たる自分らをして、歓び勇んで死地に飛び込ませる人であった。
(俺にはまだ、世の中に、やりたい事がたくさんある。中村には、おふくろも残っている!)
正直、藤吉郎は、そんなこともちらちら考えた。しかし、それは一瞬の頭のなかの明滅である。一千の兵馬の足音と、炎天に焼けきった鎧具足の音は、ざッ、ざッ、ざッ――と、鳴り揃って、それが皆、
死ねや。死ねや。
と、聞えるのだった。
陽に燃え、汗にぬれ、埃をかぶった藤吉郎の顔は――いや全軍の将兵の顔は皆、やつがしらみたいになっていた。どんな必死の場合でも、頭のすみに、何か余裕といったような、暢気を残している質の藤吉郎も、きょうばかりはそうして何時の間にか、
戦う!
死ぬ。
それしか真っ向に考えてない鉄甲のような、不惜身命になりきって進軍していた。
小山、また小山と、一つ一つ踏み越えて行くほどに、視野の彼方の戦雲の煙は、次第に濃く近く見えて来た。
「やっ、味方らしいが?」
丘道の上へ、軍の先頭が出た時である。血まみれな傷負が一人、よろ這いながら彼方より駈けて来て、何か、意味の聞きとれない絶叫をあげながら近づいて来た。