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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens

Aozora Bunko

一切は、信長の胸三寸の行動で、若い侍臣たちには、何を目的として、乱国の危険な巷に、この冒険を彼が敢えてしているのか、分らなかった。

藤吉郎にも、もとより這般の消息は、知るよしもなかった。けれど彼は彼で、その間、よい見学をしていた。

「京都も変ったなあ」

と、思う。

針を売って、漂泊していた頃、彼は京針を仕入れにここへ出て来たこともある。指折れば、六、七年前でしかないが、皇城の地の世態は、甚だしく変っていた。

室町幕府はあるが、十三代足利義輝の存在は、名ばかりの将軍家であった。

管領細川晴元はあるが、これもあるという名ばかりで、実権はない。

古い池のように、ここの人心も文化も、澱みきっていた。あらゆるものに末期が感じられる。

実際の主権者にある代管領の三好長慶は、その老臣の松永弾正久秀のために左右されていて、ここにも醜い葛藤と、うごきのつかない無能や暴政ばかりあった。民衆の眼にさえ、

「もう遅くはない」

と、自解のきざしを陰口に囁かれている時流だった。

では、その時流は、どう向いてゆくか。といえばこれは誰にも暗澹であった。徒らに華美で浮薄で夜の灯も盛りながら、一面には蔽い難い暗さが人々の心を占めているのも、