Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
「いらざること。はやく手伝わせて、酒の支度して来い。まずい手料理など、藤吉郎どのに、お目にかけてみるがよい」
「いや、もう」
と、藤吉郎は、体を固くして、恐縮した。
城内の柴田、林などの、手強い重臣たちからは、ひどく押し太い、厚顔な男と睨まれている彼も、ここでは甚だ羞恥がちな、一箇の好青年でしかなかった。
寧子は、薄化粧して、やがて挨拶に出て来た。
「なんのおかまいも出来ませぬが、父は、この通りはなし好き、どうぞごゆるり遊ばして」
それから、手料理の膳部と、銚子など、楚々と、運んで来た。
「はあ。……はい」
藤吉郎は、又右衛門のはなしには、まるでうつつに答えながら、寧子の身ごなしや、寧子のうしろ姿に見とれていた。
……横顔もいい。
などと思った。
何よりも気に入ったのは、少しも悪びれたふうのない、木綿の生地みたいな、ありのままのところだった。
いやに羞恥んだり、取り澄ましたり――ありがちな女性の媚態がない。
では、ふくよかな女らしさに欠けているかというと、包まれている中に、薄月夜の野の花みたいに香うものがある。ほんのりと、楚々とある。
敏感な藤吉郎の眼や嗅覚がしきりとそれに触れるのであった。