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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
この答えにもこつがある。
よく使いに遣られた者が、戻って来てその任務の返辞をするのに、あれこれと、途中のことやら枝葉の問題ばかり長々といっていて、かんじんな使命の結果は、調ったとも調わないとも、容易にいわない癖の家来がある。
信長はひどくそれが嫌いで、わき道のはなしばかり答えている使臣には、傍眼にもわかるほど眉に焦々といやな気色をただよわせる。それでも気づかずに無駄をいっていると、
「用事は。用事は」
と、注意する。
或る時、信長は、侍臣たちへそのことについて、こう語ったことがある。
「使いを立てた出先の用事が、首尾よいか、不首尾か、待つ身は案じておるものじゃ。要らぬ枝葉のはなしは、後にて足せ。主人の前へ復命に帰りなば、口を開く第一に、お使いのこと、調いましてござりますとか、お使いの儀、残念ながら不調に終りましたとか、肝腎の結果を先に申し告げて、それよりゆるゆると、かくかくの仔細とか、先方のはなしとか、何なりと余談いたすがよいものぞ」
彦右衛門一益も、それは伝え聞いていたし、こんどの重大な外交に選ばれて使いした程の者であるから、信長の姿を仰いで、一礼すると、すぐ先にいった。