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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
攻めれば攻めるほど、信長の力は消耗される。自己の手足のために、自己の全体を衰弱させてしまう。
信長は、非を悟って、抛っておいたのである。数年間というもの、鼻の先に、この叛賊を生かしておいたのである。
で――今川家は、かえって、山淵左馬介を疑惑しだした。鳴海は、相互から疑いの眼で見られていた。
大国から疑いの眼で視られることは、それ自体、滅亡の予告である。左馬介はどう思ったか、清洲の信長の許へ行って、多年の不心得を詫び、復帰を願った。
(――それみい。元木にまさるうら木なし。わかったらよい。忠勤をはげめ)
信長は一言でゆるした。
それ以来、山淵父子の奉公ぶりには、感心してよいことこそ多かったが、疑わしい行動は見えなかった。
が――この見えないものを、見ていた者が二人あった。
いつも信長の側に坐っている小姓の前田犬千代と、いつも信長の側にはいないが、城内の何処かにいる藤吉郎とであった。
右近も、日頃から、その二人には何となく懸念を抱いていたが、折も折、普請奉行の役を藤吉郎に奪われた翌日、犬千代に斬りつけられたので、
(ばれたか)
と、事の発覚を早合点し、身の深傷にも顛倒して、城内から逃げ出して来たのであった。