Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Read 新潮記 (しんちょうき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 155,541 characters · 305 screens
「黙れ、貴様たちがおれを斬りに来たのでなくて、なんのために季節はずれの今頃ここへ登るか、なんのために夜を徹してこの岩屋へ来る要がある」
「それはまさにそうです、わたしが訊きたいくらいのものですよ、だが云って見ればそういうまわりあわせになったんですね、わたしは登るのをよそうと云ったんです、二合目で泊ることも……」
「大さん、飯を拵えるよ」
秀之進はそういって、土間の隅にある釜戸のほうへと去った。
「それでもお疑いが晴れないのでしたら」と秀之進のほうを見やりながら大助は云った、「生国と名を名乗りましょう、二人とも讃岐のくに高松の者で、あれは早水秀之進、わたしは太橋大助といいます、江戸から水戸へこころざしてゆく途中なのです」
「兄上さま、お人違いのようでございます」
「水戸へ、水戸へおいでか」兄のほうは妹の言葉も耳にいらぬようすで、そこへ刀を置き、にわかに眼を輝かしながら坐り直した、「ああ水戸、拙者にもあこがれの地です、だがもう行ける望みはない、このとおりのからだですから……そして、水戸へいかれるとすると、おそらく東湖先生をおたずねなさるのでしょうね」
「さあどうなりますか」