Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Read 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) by 林 芙美子 (はやしふみこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 247,330 characters · 497 screens
荷車いっぱいにおからをバケツで積みこんでいる人夫がいる。酒屋の店さきの水道の水は出っぱなしで、小僧が一升徳利を洗っている。味噌樽がずらりと並び、味の素や福神漬や、牛鑵がずらりと並んで光っている。一口坂の停留場前の三好野では、豆大福が山のようだ。三好野へはいって一皿十銭のおこわと豆大福を二つ買って、たっぷりと二杯も茶をのんで、私は壁の鏡をのぞいている。
おたふくさまそっくりで、少しも深刻味がない。髪の毛はまるでかもじ屋の看板のように房々として、びんがたりないので、まげがほどけかけている。世紀がふくらむごとに、大量に人がふえてゆく。悲劇の巣は東京ばかりでもあるまい。田舎の女学校では、ピタゴラスの定理をならい、椿姫の歌をうたい、弓張月を読んだむすめが、いまはこんな姿で、悄然と生きている。大福の粉が唇いっぱいにふりかかり、まるで子守女のつまみぐいの図だ。
夜。また気をとりなおして童話の続きにかかる。風はますますひどくなって来た。酔っぱらいの学生が二階の廊下で女中をからかっている。時々声が小さくなる。誰かが二階から中庭へむけて小便をしていると見えて、女中がいけませんよッと叱っている。