Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Read 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) by 林 芙美子 (はやしふみこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 247,330 characters · 497 screens
大久保の家主は大きい植木屋さん。帳面に受取りの判こを貰って、お茶を一杯よばれて帰る。
新宿の通りはがらんとしている。花屋のウインドウに三色すみれや、ヒヤシンスや、薔薇が咲き乱れている。花はいたって幸福だ。電車通りのムサシノ館はカリガリ博士。久しく活動もみないので、みたいなと思う。街を歩きながらうとうととした気持ちなり。平和な気配。森閑と眠りこけている遊廓のなかを通ってみる。どの家の軒にも造花の桜が咲いている。
裏町の黄色い空に
のこぎりの目立ての音がしている
売春の町にほのめく桜 二月の桜
水族館の水に浮く金魚色の女の写真
牛太郎が蒲団を乾している
はるばると思いをめぐらした薄陽に
二階の窓々に鏡が光る。
売春はいつも女のたそがれだ
念入りな化粧がなおさら
犠牲は美しいと思いこんでいる物語
鐙のない馬 汗をかく裸馬
レースのたびに白い息を吐く
ああこの乗心地
騎手は眼を細めて股で締める
不思議な顔で
のぼせかえっている見物客
遊廓で馬の見立てだ。
雑貨屋で大学ノート二冊買う。四十銭也。小さいあみ目のある原稿用紙はみるのもぞっとしてしまう。あのひとを想い出すからだ。あのひとは小さいあみ目の中に、月が三角だと書き、星が直線だと書く。