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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
すれば、綾之助には紅蓮洞氏が結ぶの神でなくてはならない。恋人であり夫である石井健太氏は、紅蓮洞氏が率いた三田党の出身であるから――けれど、ぐれさんに言わせれば「三田の堂摺ではない、俺は天下の堂摺だ」と大語するかも知れない。
堂摺連は自分たちが推称する女王のかかる席へは、道を遠しとせず出かける。雨も、雪も、熱血漢の血を冷すには足りない。懐のさびしいのは隊を組んで歩いて廻る。もすこし熱狂に近いのは女王の車へ随従して車で乗廻す。それよりも激しいのは人力車の轅につかまったり後押しをしたり、前へ立って駈出していったりする。高座に渇仰の的が姿を現わすと、神妙に静まりかえって、邪魔にならぬほどのよい機を見て、語り物の乗りにあわせて、下足札で拍子をとり、ドウスル、ドウスルと連発する。けれどもそういう連中は割合に淡泊であった。
綾之助の人気は絶頂ともいってよいほどに、彼女が十八、九になると満都に響きわたった。いうまでもなく彼女の人気は平民的で広かった。名高い芸妓などの名は、きいていても青年が眺める花ではないが、綾之助の場合は気楽で、そして語りものを通して一種の親しみをもつことが出来る。