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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens

Aozora Bunko

私は須磨子の自殺の原因がなんだかききもしないうちから、きくまでもないもののように思っていた。

「彼女が芸術を愛していれば死ねるものではないだろうに……死ななくったって済むかと思われますね。財産もあるのだというから外国へでも行けば好いに」

電気が点くと、そう言った人のあまり特長のない黒い顔を見ながら、この人は恋愛を解さないなと思った。一本気で我執のかなり強そうだったお須磨さんは、努力の人で、あの押きる力は極端に激しく、生死のどっちかに片附けなければ堪忍できないに違いない。

「とにかくよく死んだ。是非はどうとも言えるが、死ぬものは後の褒貶なんぞ考える必要はないから」

と言うものもあった。死んだという知らせを電話で聞いて、昂奮して外へは出て見たが何処へいっても腰が座らないといって、モゾモゾしている詩人もあった。けれど、みんな理解を持っているので、芳川鎌子の事件の時なぞほど論じられなかった。

「島村さんの立派な人だったってことが世間にもわかるだろう。須磨子にもはっきりと分ったのでしょう」

そんなことが繰返えされた。全く彼女は、島村さんの大きい広い愛の胸に縋り、抱かれたくなって追っていったのであろうと、私は私で、涙ぐましいほど彼女の心持ちをいじらしく思っていた。