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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
彼女は恩師であり情人であった島村抱月氏に死別して後、はじめて生と愛の尊さを知り、カルメンに扮した四日目の夜に縊れ死んだのであった。
それにくらべれば魔術師の天勝は、さびしいかな天勝といいたい。彼女はいつまでも妖艶に、いつまでもおなじような事を繰返している。彼女の悲哀は彼女のみが知るであろう。
豊竹呂昇、竹本綾之助の二人は、呂昇の全盛はあとで、綾之助は早かった。ゆくとして可ならざるなき才女として江木欣々夫人の名がやや忘られかけると、おなじく博士夫人で大阪の高安やす子夫人の名が伝えられ、蛇夫人とよばれた日向きん子女史は、あまりに持合わせた才のために、かえって行く道に迷っていられたようであったが、林きん子として、舞踊家となった。
九条武子、伊藤子は、大正の美人伝へおくらなければなるまい。書洩してならない人に、樋口一葉女史、田沢稲舟女史、大塚楠緒子女史があるが余り長くなるから後日に譲ろうと思う。
――大正十年十月『解放』明治文化の研究特別号所載――
附記 樋口一葉女史・大塚楠緒子女史・富田屋八千代・歌蝶・豊竹呂昇は病死し、田沢稲舟女史は毒薬を服し、松井須磨子・江木欣々夫人は縊れて死に、今や空し。