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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,172 characters · 277 screens
死ぬる日の半月ばかり前に、偶然に行きあったのは、かの、かりそめの別れとすかされて、おとなしく頷ずいて別れた東の御連枝だった。だが、今度はかりそめの、この世での、それが長い別れになってしまった。おもいがけない病が急に重って、それとなく人々が別れを告げに集るとき、その人も病院を訪れたというが、武子さんは逢わなかったのだった。お別れはもう先日ので済んでおりますと、伝えさせたという。
私が、戯曲的に考えれば、生母の円明院お藤の方が、手首にかけた水晶の数珠を、武子さんが見て、
おかあさま、そのお数珠を、私の手にかけてください。
といわれたということが、新聞にも出ていたが、その水晶の数珠は、かつて、武子さんが、御生母へあげたものだということから、その数珠には、母子だけしか知らない温かい情が籠っているかもしれないと、思うことだった。
君にききし勝鬘経のものがたりことばことばに光りありしか
君をのみかなしき人とおもはじな秋風ものをわれに告げこし
この日ごろくしき鏡を二ツもてばまさやかに物をうつし合ふなり
勝鬘経は、印度舎衛国王波斯匿と、摩利夫人との間に生れて、阿踰闍国王に嫁した勝鬘夫人が仏教に帰依した、その説示だという、最も大乗の尊さを説いたもので、わが聖徳太子も、推古女帝に講したまいし御経ときいたが、君とは、父法主でも、