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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,172 characters · 277 screens
雪の肌に滴々たる水は白蓮の露をおびたる有さま。
艶々したる島田髷も少しとけかかり、自由自在に行きつもどりつして泳ぐさまは、竜の都の乙姫が、光氏を慕って河に現じたり。また清姫が日高川へ飛びこんで、安珍を追ったときはこんなものか、十七や十八で豪気なもの。
と、合引橋の泳ぎ場で、新富町の寄席、内川亭にいる娘が泳いでいたのを、別品女中を連れて游ぎに行くと出ている。
それも無理のないのは、その辺、紅毛人の散歩場なのでもあるし、つい先ごろまでは、人中で肌などあらわすようなことは、死んでもしないというふうに女はしつけられていたのだから、白昼衆目の見る前で、島田の娘の水泳ぶりには、記者も驚いたのであろう。
だが、また、佃島から、渡舟でわたって来た盆踊りは、この界隈の名物で、異境にある外国人たちを悦ばせもした。そうかと思えば、島原の芝居は炎暑で不入り、元金七千円金が、昨日の上り高では千五百円の大損、それに引きかえて、同所の、火除け地へ、毎夜出る麦湯の店は百五十軒に過ぎ、氷水売は七十軒、その他の水菓子、甘酒、諸商人の出ること、晴夜には、半宵の物成高五百円位、きわめて景気よしともある。