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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,172 characters · 277 screens
だから、あんな奴にと思うような男に多くの女がひっかかって、恋猟人の附け目となり、釣瓶打ちにもされるのだ。
そこでモルガン氏に帰れば、彼は、米国から、失恋の痛手を求めに、東洋へ来たのだと、何処からとなく知られていた。フランスでも癒されない恋の痛手を、慰撫してくれる女を、東海姫氏国に探ねて来たのだと噂された。
しかし彼は、かなり金ビラをきって情界を遊び廻り、泳ぎまわった割合に、花柳の巷でさえ、惚れた女を、幾度も逃している。
モルガンは、お雪と逢ったはじめは、お雪の十九の年で、あっさりと別れているが、お雪の廿一の年に来て恋心を打明け、廿三のときに正妻に根引きした。それが三度目に日本へ来たときのことで、その後、結婚して帰国した次の年に一度、また次の年に来て、それきりモルガン氏も日本へは、バッタリ来なくなってしまったのだ。
お雪との交渉もまだはじまらない時分、京都へも足を踏み入れない前に、モルガンは惚れた人がある。それは、芝山内の、紅葉館に、漆黒の髪をもって、撥の音に非凡な冴えを見せていた、三味線のうまい京都生れのお鹿さんだった。
お鹿さんは、お雪とは、全然容子の違う、眉毛の濃い、歯の透き通るように白い、どっちかといえば江戸ッ子好みの、好い髪の毛を、厚鬢にふくらませて、歯ぎれのよい大柄な快活な女だった。