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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

Read 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,678 characters · 394 screens

Aozora Bunko

「ひどく見縊るね、じゃ、まあ、さすまい、で、なんだね、名吟ができたかい、どうも昔から下戸に名吟がないと云うぜ」

「あるとも、僕は毎日海岸へ出たり、あの芒の穂の出た旅館の裏手の草の中を歩いてたよ、あの草っぱらに夕月の射したとこは好かったよ」

「そうだ、あの草っぱらは好いな、あちこちに犬小屋のような小屋がけをして、婆さんがいるじゃないか、厭な婆あだよ」

「婆あって、婆あじゃないじゃないか、壮いじゃないか」

「あれが壮いもんか、もう六十だろう、狼のように痩せた婆あじゃないか」

「そんなことはない、二十二三だよ、背のすらりとした好い女だよ」

「おい、おい、ばかなことを云うなよ、なにが二十二三の好い女だい、あんな狼婆あを、おい、寝とぼけちゃいかんよ」

「寝とぼけるものか、君こそ、女を六十婆あだなんて、君こそ寝とぼけてるよ」

「君はどうかしてるよ、あの銀の針金のような白髪と、木彫のような皺とがわからないかい、なにが女なのだ、六十の狼女かい」

「君はけしからん、君はちょっと遠くから見た位だから、見ちがえてるだろう、僕はその女としみじみ話してるから、まちがえっこはないよ」

「じゃ、君は、あの、婆あも女も区別ができなかったのだろう、笑わかすなよ」