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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Read 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) by 横光 利一 (よこみつりいち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 86,787 characters · 177 screens
彼女の頭髪には、山鳥の保呂羽を雪のように降り積もらせた冠の上から、韓土の瑪瑙と翡翠を連ねた玉鬘が懸かっていた。侍女の一人は白色の絹布を卑弥呼の肩に着せかけていった。
「空の下で、最も美しき者は我の姫。」
侍女の一人は卑弥呼の胸へ琅の勾玉を垂れ下げていった。
「地の上の日輪は我の姫。」
橘と榊の植った庭園の白洲を包んで、篝火が赤々と燃え上ると、不弥の宮人たちは各々手に数枚の柏の葉を持って白洲の中へ集って来た。やがて、琴と笛と法螺とが緩やかに王宮のの方から響いて来た。十人の大夫が手火をかかげて白洲の方へ進んで来た。続いて、幢を持った三人の宿禰が進んで来た。それに続いて、剣を抜いた君長が、鏡を抱いた王妃が、そうして、卑弥呼は、管玉をかけ連ねた瓊矛を持った卑狗の大兄と並んで、白い孔雀のように進んで来た。宮人たちは歓呼の声を上げながら、二人を目がけて柏の葉を投げた。白洲の中央では、王妃のかけた真澄鏡が、石の男根に吊り下がった幣の下で、松明の焔を映して朱の満月のように輝いた。その後の四段に分れた白木の棚の上には、野の青物が一段に、山の果実と鳥類とが二段目に、鮠や鰍や鯉や鯰の川の物が三段に、そうして、海の魚と草とは四段の段に並べられた。