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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens
かなりみじめなプロレタリヤが多い。というよりも、ほろびゆく江戸の滓でそれがあったのかも知れない。私はただ忠実に、私の幼少な眼にうつった町の人を記して見るにすぎない。もとより、その生活の内部を知っているものではないし、面白くもなんともないかもしれないが、信実に生ていた一面で、決して作ったものではないというだけはいえる――
打明けていえば、『女人芸術』の頁数の都合で、いつも締切りすぎに短時間で書き、二枚五枚と工場へはこび、しかも編輯の都合で伸縮自在のうきめにあったもので、そのために一層ありのままで文飾などありません。私の生れたうまや新道、または、小伝馬町、大伝馬町、馬喰町、鞍掛橋、旅籠町などは、旧江戸宿の伝馬駅送に関係がある名です。文中にもある馬込氏は、江戸宿の里長馬込勘解由の家柄で、徳川氏が江戸に来たとき、駄馬人夫を率いて迎えた名望家で、下平河の宝田村――現在の丸の内――から土地替に伝馬町へ移され名主となった由緒があるのです。大伝馬町の大丸の下男が、旅籠町となったのをかなしんで、町札をはがしたことも書きましたが、旅籠町とはずっと昔にも一度つけてあった町名で、旅籠とは、馬の食を盛る籠、馬飼の籠から、旅人の食物を入れる器となり、やがて旅人の食事まかないとなり、客舎となり、駅つぎの伝馬旅舎として縁のふかい名であり