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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens
黒ちりめんに加賀紋の羽織を着て、風呂敷ほどの絹半巾を鼻からまいて、車からおりると、
「おッしょさん――」
て鼻声を出して、踊るように袖をバタバタさせて、
「おお寒む寒む、はよう温かいものでもおくれ。」
と妙に甘ったれた調子で太い声を出した。
みんなが羽根や手鞠をついていると、
「わたいも、つこ。」
と仲間になる。
「さあ、あんたはん、あげますウ。」
と器用に、なんでも巧者だ。
アンポンタンは思った。この女は、どっか大きな家の娘で、病気――ばかのようなので、髪を断らして遊ばせてあるのだろう、だから、あんなに無作法なのだと――そう思えたほど、堅気の娘たちとは調和しない奔放さがあった。
その人は斬髪だった。だが、その女の人が、なんで田之助の俳名と関係があるのかがわからなかった。あたしの解釈では、くさ草紙の人物、環菊のお田之さんのように、これは生きた人間が田之助ぶっているのだろうと思った。しかし、環菊のお田之はそれは美しい女に描いてあるが、曙山という女は汚らしかった。だから言った。
「あの女、気狂い?」
すると、お金坊は金切り声を張りあげて、
「おッさん、曙山さんのことを気狂いかって!」