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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens
味噌を掻廻しておいて知らん顔をして、それからおわびをして蔵から出してもらった。
おや? この樽の味噌は――あら? この樽のも――
やがて、日がたってから、家のものが変な顔をして、味噌汁を吸うのを、彼女は小躍りしてよろこんだ。
「私のしっこを飲んでいる――」
大人たちは、はじめは何をいっているのかとりあわなかったが、彼女があんまり伊勢子は正直だ、伊勢子は正直だ、私のしっこを飲んでいる――と小躍りするので、やっと彼女の悪戯が、味噌をだいなしにしてしまったのだと感じた。
この祖母、江戸へ来て嫁入って、すぐ大火事にあって、救米のおむすびをもらった時、傍にいた者がお腹がすきすぎて、とうてい一個の握飯では辛棒がなりかねるとなげくと、さっそくに抱えていた風呂敷包に手拭をかむせ、袖の下に寝させたかたちにして、
「お役人様、ここにも一人おります。」
と、まんまと一人分握飯をせしめた。花婿だった祖父びっくりして、
「お前はおそろしい女だ」
と嘆息したそうだ。昔の町人の考えでは、大胆でも、機智があっても、女らしくない女としたものと見える。メソメソ、グズグズ、ブツブツ、ウジウジしているのが女らしい女としたのであろう。