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はやみみさんじとりものききがき
早耳三次捕物聞書
林 不忘
Read 早耳三次捕物聞書 (はやみみさんじとりものききがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,640 characters · 21 screens
石切梶原ではないが刀も刀斬手も斬手といいたいところ、ううむと唸ると三次は腕を組んで考えこんだ。
三次が考えこんだのも無理はない。過ぐる年の秋の暮れから正月へかけて、ひときわ眼立った辻斬がたださえ寒々しい府内の人心を盛んに脅かしていた。当時のことだから新刀試し腕試し、辻斬は珍しくなかったが、そのなかに一つ、右肩から左乳下へかけての袈裟がけ斜一文字の遣口だけは、業物と斬手の冴えを偲ばせて江戸中に有名になっていた。殺される者には武士もあった、町人もあった、女子供さえあった。昨夜はあそこ、今朝はここといった具合に、ほとんど一夜明けるたびに生々しい袈裟斬りの屍体が江戸のどこかに転がっているというありさまだった。誰も姿を見た者はないがもちろん侍、しかも剣の道に秀でた者の仕業であることは何人も認めざるを得なかった。死骸はいつも一太刀深く浴びて胸から腹へ大きな口を開いていたが、けっして切って落した例はなく皮一重というところで刀を留めて危なく胴をつないでおくのがこの辻斬の特徴であった。これはとうてい凡手の好くするところではない。必ずや一流に徹した剣客の狂刃であろうと、町奉行配下の与力同心を始め町方の御用聞きに到るまで、言い合わしたように町道場の主とその高弟たち、さては諸国から上って来た浪人の溜りなどへしきりに眼を光らせて