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めいじぶんめいしじょうにおけるふくざわおう
明治文明史上に於ける福沢翁
大隈 重信
Read 明治文明史上に於ける福沢翁 (めいじぶんめいしじょうにおけるふくざわおう) by 大隈 重信 (おおくましげのぶ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,696 characters · 14 screens
この時に当って四囲の福沢先生に対する圧迫はなかなか盛んなものであった。井伊掃部頭の京都に於ける「クーデター」に依て、一時攘夷家達は閉息したのである。京都も閉息した。ところが忽ちその反動が来った。ちょうど亜米利加合衆国に使節を送って、亜米利加の文明を視、日本の改革を為そうという幕府の考えは全く一転したのである。亜米利加の使節が返ってみると、大切なる開国者の井伊掃部頭は桜田の変で不幸にも攘夷家達、乱暴なる有志に殺されたのである。幕府の形勢一変、京都の勢力は非常に強くして、幕府を圧迫して既に攘夷が決したとこういう訳、そこで福沢先生も亜米利加から返って一層欧米の文明を皷吹して、早々日本の文明を進めようとした。ところが内地の形勢は愈々攘夷、少しでも開国を論ずる者があれば直ぐ殺すという、その圧迫はなかなか非常なものである。大抵気の弱い人はやめてしまうのである、やめた人も大分あったのである(拍手)。今日から考えるとなんでもないように思うが、なかなかそういう訳でない、実に恐るべきほとんど朝夕を計られぬという時である。
その時にやはり依然として……多分その時の福沢先生の状態は、封建の武士は今日から見れば、豊かなものと考えている若い諸君がいるかも知れないが、なかなか貧乏している。